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ドンカーブートの新着レビュー
2012年7月30日 投稿
オランダ唯一の自動車メーカーである「ドンカーブート」。元々は、「ロータスセブン」のキットカー生産を行っていましたが、現在では、全てがオリジナルブランドとして生産しています。 特に、現代のクルマの持ち合わせた、快適性や、先進性などとはまるで違う方向で車両開発を行い、一切の無駄を省いた“走るだけのクルマ”の開発、生産を行っています。 イエローに塗られたメーカーの広報車両を短時間ながら借用し、取材を敢行しました。 ライバルとして、「ケータハム」がまず挙げられます。一時は、同車に比べればマイルドと言われましたが、この数年でクルマを取り巻く環境が大きく変わり、運転に必要なもの以外、余計なものが皆無の「ドンカーブート」はやはり、乗り手を選ぶ車であります。 全長3410mm×全幅1730mm×全高1100mmというこのクルマにしかありえないディメンションは、ハイブリッドカーを見慣れた目からすれば、レーシングカーそのものです。 ブラックの本革製フルバケットシートに沈み込むように身を収めると、アスファルトを手の平で触れるほど、着座位置が低く、身体とクルマが一体化。小径のステアリング奥には、イタリアの名門計器ブランドである「イエガー」製のアナログメーター類がずらりと並び、デジタルチックなものは皆無。エアーコンディショナーも試乗車両には未装備でしたので、カーボンファイバー製のダッシュボードはシンプルそのものです。 エンジンを始動させると、電子制御燃料噴射装置を搭載しているにも関わらず、ばらついたアイドリングを始めます。その音量は、ご想像のとおり盛大で、自動車というより、リッターバイクのそれに近いものです。 トランスミッションは5MTのみ。手首のスナップで“コキッ”と操作できるもので、節度感も心地が良いもの。ストロークも超がつくほど短く、ダイレクト。 エンジンは、フォード製直列4気筒DOHC16バルブで、1796cc。これを、「ドンカーブート」の手によって吸気や排気などをチューンされ、最大出力140ps(103kW)/6750rpm、最大トルク17.3kg・m(169.7N・m)/5250rpmを発生。スペックだけ聞けば大した事はないように思えますが、車体重量は570kgと現在販売している自動車では、もっとも軽量。この軽さが最大の武器になり、快適性に長けたカッコばかりのスポーツカーなど、足元にも及ばない潜在能力を持っています。 車体重量570kgのボディに排気量1796ccですから、低速トルクも十分でレーシングカーのようなエクステリアから想像するより、はるかに取り扱いは楽です。発進も気難しいところなどなく、アイドリングのままクラッチを浮かせば、スルスルとタイヤが転がり、マニアル車に乗った経験のある方なら普通に走らせる事は、容易です。 アクセルを踏み込むと、生ガス(ガソリン臭)やオイルの香りと共に、轟音を発しながら弾かれたようにアスファルトを蹴り上げます。エンジンノイズ、トランスミッション、ロードノイズ、排気音が混ざり合った轟音は、無論、助手席と会話など不可能。フロントスクリーンがあるとはいえ、フロントタイヤが巻き上げた小石が顔を直撃する事もしばしば。かなりワイルドであります。 鋼管スペースフレームに、前後ダブルウイッシュボーンのサスペンションを取り付けるという手法でシャシーを構成されていますが、ボディ剛性は極めて高く、ボディのよじれなど皆無。前205/50R15、後225/50R15とこの手のクルマにしてはワイドなタイヤと相まり、試乗コースのワインディングを本気で走らせた程度では、クルマの限界域が見えてきませんでした。 目の前に迫るコーナーでノンアシストのダイレクトなブレーキを踏み、ヒール&トウで回転を合わせシフトダウン、再び轟音と共にコーナーを立ち上がる・・・。現代のクルマでは退化してしまった動物的な面白さが味わえる数少ないクルマ。「ドンカーブート」。 運転が好きな大人には、最高に贅沢なオモチャであると実感しました。
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