▲平成生まれが子供の頃に存在していた車たち、それが90年代車なのだ▲平成生まれが子供の頃に存在していた車たち、それが90年代車なのだ

平成生まれが懐かしむ、90年代車

皆さんは旧車と聞くとどのくらいの年式を思い浮かべるでしょうか? 定義は諸説ありますが、一般的にはトヨタ・2000GTなどが誕生した60年代? それともハコスカやケンメリが一世を風靡した70年代でしょうか?

もちろん、その頃には多くの名車が誕生したのは紛れもない事実ですが、現在は平成28年。平成生まれですらアラサーになる時代。そういった平成生まれユーザーからしてみれば、幼少期に走っていた車、つまり90年代の車ですら立派な「旧車」となるのです。

先日参加させていただいた若者の車好きが集まるコミュニティーでも、実際90年代の様々な車を懐かしんで乗っている平成生まれの若者たちに出会いました。彼らが90年代車にハマるきっかけは「子供の頃親が乗っていた車種」だったり、「子供の頃に見かけてずっと憧れ続けていた車種」と様々。楽しみ方もフルノーマルを維持する人もいれば、90年代に流行ったカスタムを取り入れる人、現代の車に負けないようにレベルアップを試みる人と、楽しみ方も多岐にわたっているのも特徴です。

確かに、2000年代に排ガス規制や衝突安全基準が厳しくなった関係で、90年代までの車でしか味わうことのできないデザインやエンジンがあります。一方で装備や性能は現代の車と遜色ないレベルに達しているため、日常的に使用することも可能であるため、趣味と実益を兼ねた車とも言えるでしょう。

また旧車は、状態を気にしなくてはいけない車が多いのが難点ですが、90年代の車であれば、懐かしさとお手軽さを併せ持つちょうどいいバランスの年代なのです。さらに、ネットでもまだ旧車にしてはそれなりに台数があるので、多少は選ぶことができます。そういった意味で、懐かしのデザインやエンジンの車で程度のよい個体を安価で手に入れるラストチャンスが今の90年代なのかもしれません!

ということで、今回はそんな90年代の名車を振り返ってみたいと思います! なお「名車」の定義は様々かと思いますが、今回は新車時に好調なセールスを記録した車種や新たな価値を創造した車種、新技術を投入した車種、唯一無二なものを持った車種を取り上げます!
 

トヨタ マークII/チェイサー/クレスタ(X80系・1988~1992年)

▲クラウンにも匹敵する装備を持ったマークII 3兄弟だが、クラウンを超えることがないようにコントロールされていた▲クラウンにも匹敵する装備を持ったマークII 3兄弟だが、クラウンを超えることがないようにコントロールされていた
 

当時の同級生の家族か学校の先生が必ず乗っていた、と言っても過言ではないのがこのマークII 3兄弟ではないでしょうか。

ハイソカーの雰囲気漂うマークII、スポーティなチェイサー、落ち着いた大人のセダンのクレスタ、と車種によってキャラクターを巧みに使い分けていたのも特徴で、搭載されるエンジンも1800ccの4気筒エンジンから、6気筒エンジンもスーパーチャージャー付、ツインターボ、3リッターの大排気量NA、さらにディーゼルエンジンと多岐にわたっています。

その中でも特に強烈なのが、90年に追加された280馬力を発生する1JZ-GTE型ツインターボエンジン。スポーツカーすらカモるポテンシャルを秘めていました。
 

日産 プリメーラ(初代・1990~1995年)

▲ハンドリングの良さに定評があったプリメーラ。オーテックが手がけたバージョンも存在した▲ハンドリングの良さに定評があったプリメーラ。オーテックが手がけたバージョンも存在した
 

「90年代までに世界一の動性能を実現しよう」という当時の日産が掲げた901活動によって多くの名車が誕生しましたが、その中でも特に印象的なのがプリメーラでした。

欧州車を強く意識したプリメーラは、高い直進安定性やスポーツカー顔負けのハンドリングが評論家や好事家から高評価を受けましたが、一方で乗り心地の悪さを指摘する声もあり、結果的にマイナーチェンジ時に若干マイルドな方向にリセッティングがなされました。ただ、「プリメーラパッケージ」と称された車両のパッケージングの良さは正統派セダンとして十分なもので、そのパッケージをさらに拡大させた5ドアハッチバックモデルもイギリスから逆輸入される形で販売されています。
 

三菱 FTO(初代・1994~2000年)

▲「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したこともあるFTO。それを記念したイエローボディの限定車もあった▲「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したこともあるFTO。それを記念したイエローボディの限定車もあった
 

90年代を代表するFFスポーツといえばホンダのタイプRシリーズ(シビック&インテグラ)が真っ先に頭に浮かぶところですが、その2台に匹敵するほど高い評価を受けていたのが三菱・FTO。

トップグレードには200馬力を発生するV6エンジンを搭載し、フロントヘビーと言われながらもシャープな回頭性を持ち合わせており、多くの評論家から称賛の声を受けていました。その走りの良さと前衛的なデザインが評価され「第15回日本カー・オブ・ザ・イヤー」も獲得しているのです。また、今でこそ多くの車種に採用されている「MTモード付AT」を先んじて採用したのもこのFTOでした。
 

ホンダ ステップワゴン(初代・1996~2001年)

▲オデッセイ、CR-Vに次ぐ「クリエイティブムーバー」の第3弾として登場したのがステップワゴン▲オデッセイ、CR-Vに次ぐ「クリエイティブムーバー」の第3弾として登場したのがステップワゴン
 

当時の多人数乗車が可能な車といえば、キャブオーバータイプのワンボックスカーをベースにしたものが一般的でした。そこにきら星のごとく現れたのがステップワゴン。

今でこそミニバンの主流となったFFレイアウトで低床、フラットフロアでウォークスルーも可能、そして豊富なシートアレンジなど、すべてを兼ね備えた車であったのです。また、5ナンバーサイズ内に収め、四角いボディで見切りがよかったことも日常的に車を使用する主婦層の支持を集めて成功につながりました。一方でボクシーでプレーンなルックスは、カスタマイズのベースとしても人気となっています。

この年代でしか味わえないという点では、少し観点が違うかもしれませんが、今のミニバンブームの火付け役となった車とあって、90年代の代表車種の一つです。
 

マツダ ユーノスコスモ(4代目・1990~1995年)

▲市販車で唯一3ローターエンジンを搭載したユーノスコスモ。500万円を超える値付けがされていた▲市販車で唯一3ローターエンジンを搭載したユーノスコスモ。500万円を超える値付けがされていた
 

マツダ5チャンネルの中で、ユーノスブランドのフラッグシップだったのがコスモです。先代はルーチェの兄弟車としてやや影の薄い存在でしたが、4代目は初代と同じくスペシャリティカーとして専用ボディを持って登場。

世界初となるGPSカーナビを装着したことでも話題を集めましたが、やはりこの車を語るうえで避けて通れないのが、3ローター20B-REWロータリーエンジンでしょう。V12に匹敵する滑らかさを誇ったこのエンジンは、当時の280馬力規制に合致させるために大幅にデチューンされたといわれています。また、RX-7にも搭載された2ローターエンジンを搭載グレードも用意され、こちらのグレードでもロータリーエンジン特有のモーターのようなフィーリングを(3ローターモデルに比べれば)安価で楽しむことが可能でした。

いかがでしょうか? 平成生まれの方にとってみれば子供の頃によく見たあの車、懐かしい感情がこみあげてきたのでは? 40代~50代の方にとっては、お子様が生まれた頃に走っていた車。すでに子育てもひと段落していることでしょうし、当時実は欲しかったけど家族のために諦めた車に今乗る、というのも素敵な選択肢かもしれませんね!

興味を持たれた方はぜひ、90年代の「旧車」たちを一度探してみてください。
 

text/小鮒康一
photo/トヨタ・日産・三菱・ホンダ・マツダ