高橋勝大


車で我々に夢を提供してくれている様々なスペシャリストたち。連載「スペシャリストのTea Time」は、そんなスペシャリストたちの休憩中に、一緒にお茶をしながらお話を伺うゆるふわ企画。

今回は、テレビや映画で迫力のカースタントなどを披露する「タカハシレーシング」の社長、高橋勝大さんとの“Tea Time”。
 

高橋勝大

語り

高橋勝大

1947年、群馬県生まれ。1965年にカースタント(二輪・四輪)をはじめ、ボディスタントや劇用馬術等をこなす「タカハシレーシング」を結成。各種テレビやイベントへの出演実績があり、日本スタント界の父とも呼ばれている。愛称はBOSSで、現在は後輩育成や交通事故防止運動などで活躍している。

初めてのスタントは小学生、ギャラはバナナ1本

僕は1947年(昭和22年)に疎開先だった群馬県・月夜野で生まれました。6人兄弟、親子8人の大家族。

田舎だったから、気がついたら馬にまたがって、乗り回せるようになってた。

小学校に上がる頃に東京に戻り、世田谷の成城に住んだけど、当時は田んぼだらけののどかなところでしたね。新東宝の撮影所が近くて、姉は女優、兄は殺陣師をやってた。

小学3年生のある日、兄が学校まで迎えに来て、そのまま近くの撮影現場に連れて行かれたんですよ。時代劇の衣装を着せられ、これで馬に乗って田んぼ道を走ってくれという。

言われるままにやったけど、思えばあれが初めてのスタント経験だった。ギャラはバナナ1本(笑)。

その後も橋から川に飛び込む役とかちょこちょこ呼ばれたけど、シャイな性格だったから初めはイヤでイヤで仕方なかった。

でも周りの俳優、女優さんたちが褒めてくれるから、だんだん優越感も出てきて。気づいたらこの道に入っていたという感じだね。
 

高橋勝大 ▲高橋代表のスタントシーンをテレビ越しに見ていた人も多いのでは?(写真:タカハシレーシング提供)

車もバイクもアメ車好き洗練されすぎてないのがいい

もともと車やバイクは大好き。学生時代は八百屋のバイトで、配達の自転車でウィリーしながら走り回ったり、車の運転の練習がしたくてタクシー運転手をしてたことも。

車はいろいろ乗ったけどアメ車が好きでね。マスタング、カマロ、コルベット・スティングレイ、スポーツカーはひと通り乗ったよ。駄々っ子みたいで、武骨で洗練されすぎてないところがいいんだな。

今はピックアップのシボレー エルカミーノとバイクはハーレーを持ってる。他に趣味は、空を飛んだり、海に潜ったりすること。

パラグライダーやハンググライダー、ウルトラライトプレーン(超軽量のプロペラ機)に乗るし、ダイビングはインストラクターの資格も持ってた。陸・海・空、とにかく“乗りもの”が好きなんだね。
 

高橋勝大 ▲ガレージにはたくさんの愛車が。今はもっぱら写真中央のジープに乗ることが多いのだとか

ひと声、ひと手間かけるそれが安全運転の極意

スタントマンの仕事では、数え切れないほどの映画やドラマで飛んだり跳ねたりぶつかったりしてきた。

でも「タカハシレーシング」が広く知られるようになったのは、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』や『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』をやってからじゃないかな。

あの頃のバラエティ番組は制作者の気合もすごかったよ。予算もね(笑)。スタントの仕事は“危険”というイメージがあると思う。実際僕もこれまで全身の骨を67~68本折ってる。

でも相反するようだけど、いいスタントマンになるためにいちばん大事なのは「安全運転」なんだよね。

カースタントって無謀なことをやってるようでいて、実はなによりも緻密なリスク管理が求められる。そのためには常に目配り、気配りが必要で、僕はスタッフに「ひと声、ふた声、ひと手間、ふた手間かけなさい」と言ってる。

運転するときにはミラーを確認するだけじゃなくて、なるべく目視する。道を譲ってもらったら、思い切りオーバーアクションなぐらいに「ありがとう!」と挨拶する。そうやって声をかけ、手間をかけて運転していたら絶対に事故は起きない。

今YouTubeで「安全運転」とか「初心者のドライブテクニック」についての動画を公開してるんだけど、これからは高齢ドライバーのための安全運転教室をやりたいと思ってる。60代、70代の人が1年でも長く車の運転を続けられるようにね。
 

文/河西啓介、写真/阿部昌也
※情報誌カーセンサー 2020年9月号(2020年7月18日発売)の記事「スペシャリストのTea Time」をWEB用に再構成して掲載しています