▲1978年に本国でデビューし、ポルシェ史上最も息が長かった928 ▲1978年に本国でデビューし、ポルシェ史上最も息が長かった928

誰もが簡単に乗れるスポーツカーを目指して

ポルシェ 928シリーズは、フラッグシップモデルとして1978年にデビューした。

販売が終了する1995年まで一度もフルモデルチェンジは行われず、ワンモデルとしてはポルシェ史上最も長く生産された車だ。

新たな技術の投入により現在も進化し続けている911だが、実は30年以上前からポルシェの幹部はRR(リアエンジン後輪駆動)に限界を感じていたといわれている。

そのうえ、アメリカではシボレー コルベアをはじめRR車の安全性が取り沙汰され、RR車の販売が規制されるかもしれない、という噂が流れた。

また、かつての911は今ほど乗りやすいものではなかった。MTしかなかったし、クセの強いハンドリングであったし、言うなれば“エンスー好み”するものだった。

928はRR車規制対策であったし、より高級で、よりパワフルで、より簡単に誰もが乗れるスポーツカーとして、新たな顧客層を獲得できると踏んでいたようだ。

▲当時の911にはRRレイアウトが採用されていたが、クセが強く決して乗りやすいものではなかった。一方で928はFRレイアウトとなり、誰もが簡単に乗ることができるモデルであった ▲当時の911にはRRレイアウトが採用されていたが、クセが強く決して乗りやすいものではなかった。一方で928はFRレイアウトとなり、誰もが簡単に乗ることができるモデルであった

ATはメルセデス・ベンツ製の3速ATでデビューし、1984年から4速ATへと進化している。

928の実に8割のオーナーがATを選択したといわれており、ポルシェのもくろみはティプトロニック導入前から当たっていた。

911に勝る動力性能を持ち、快適装備をたんまり備えた高級嗜好のグランドツアラー、928。

最大の特徴は高速コーナリング中、オーバーステア傾向になりやすいリアサスペンションの各パーツの配置を可変させる「ヴァイザッハアクスル」を採用したことだ。

また、フロントにエンジンを配置し、リアにトランスミッションを搭載する「トランスアクスルレイアウト」のFR(フロントエンジン後輪駆動)を採用。

これにより前後重量配分は理想とされる50:50を実現していた。

エンジンはすべて水冷V8で、年式が新しくなるにつれ4.5L(240ps)、4.7L(300ps)、5L(330ps)、5.4L(350ps)と排気量を拡大していった。

最も新しい928でも23年落ちであることを考えれば、いかにハイパワーだったか伝わるだろう。

昨年、アメリカの高級クラシックカーオークションでは、低走行のMT車が1000万円オーバーで落札された。

空冷911相場がじわりじわりと値上がりし、あれよあれよと高嶺の花になったように、928の相場にも同じような“波”が来るのではないかと個人的に注目している。

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text/古賀貴司(自動車王国)
photo/ポルシェ