スズキ バレーノ ▲今回紹介するのは、2016年3月に販売されたスズキ バレーノ。「マイナー車」として取り上げられることの多いモデルですが、実は結構狙い目なモデルなんですよ

インド生まれのスズキの車

日本では軽自動車のイメージの強いスズキ。とはいえ近年ではスイフトやイグニスなど、コンパクトカーも世界で販売されることを見据えて開発されており、日本でも評価をグイグイ上げているイメージがありますね。

そんなスズキのもうひとつの世界戦略車であるバレーノをご存じでしょうか?

マイナー車好き界隈では、デビュー当初から絶版後のマイナー車入りは確実視されていたモデルですが(失礼)、デビュー当初のライバルはフォルクスワーゲン ポロ、フォード フィエスタ、ヒュンダイ i20といった海外勢というほど気合いの入ったモデルだったのです。

製造がインドにあるマルチ・スズキ・インディアのマネサール工場で行われることもあり(そのため区分的には輸入車)、「品質はどうなのか?」と感じる方がいるかもしれません。

しかし、インドではスズキの高級車ブランド「NEXA(ネクサ)」で販売されているプレミアムハッチバックということもあり、内外装を見ても国産コンパクトカーと比べて劣っているような部分は見受けられません。

実際、2019年6月にはインドでトヨタブランドから「グランツァ」という車名でOEM販売されることが発表されており、トヨタも認めたクオリティと言えばその仕上げの良さがお分かりいただけるのではないでしょうか。

スズキ バレーノ
スズキ バレーノ
スズキ バレーノ ▲引き締まったブラック内装にメッキ、ピアノブラック塗装、シルバー加飾を施し、上質感を演出している


エクステリアは、前後に大きくスズキのSマークが備わっているからスズキ車と分かるものの、どちらかというと無国籍的でもあり特徴的でもある不思議なもの。

恐らくSマークをオペルなどに交換してしまえば、「ああ、これが今度日本に導入される新型オペルなのね」と納得してしまうほど。ある意味飽きのこないデザインと言えるかもしれません。

2016年に日本で販売を開始したバレーノは、現行型(4代目)スイフトと共通のプラットフォームを使用していますが、スイフトよりも一回り大きな3ナンバーサイズとなっています。

そのため、後部座席やラゲージスペースがスイフトに比べて広くなっており、「スイフトも悪くはないけど、後ろが狭いんだよね……」と思える人にはピッタリですね。

3ナンバーサイズとはいえ、全長は4メートル未満の3995mmに収まっており、最小回転半径も4.9mと、スイフトの4.8mに匹敵する取り回しの良さを実現しており、3ナンバーボディのデメリットはほとんどないと言えます。

スズキ バレーノ ▲3ナンバーサイズのため、同社のスイフトに比べ後席は広くなっています
スズキ バレーノ ▲もちろん後席のシートアレンジも可能なので、レジャーなどでも活躍してくれそうです

装備面でも衝突被害軽減ブレーキなどが含まれるスズキセーフティサポートはもちろん、アダプティブクルーズコントロールも標準装備。

ターボグレードには本革シートも設定(2018年5月の一部改良では標準装備化)されるなど、このクラスの車両としてはかなりの充実装備が備わっているのも魅力的です。

搭載されるエンジンは、こちらもスイフトに用意されているものと同じ、3気筒の1Lターボエンジンと4気筒の1.2L NAエンジンの2種類。ミッションもスイフトと同様にターボには6速ATが、NAにはCVTが組み合わされます。

なお、現在はエンジンスペックもスイフトと共通のものとなっていますが、登場から2018年5月の一部改良までは、ターボモデルのみハイオク仕様でした。

82kW/169N・m(現在は75kW/150N・m)とハイパワーなので、走りにこだわる人には一部改良前がオススメかもしれません。

スズキ バレーノ ▲1Lと小排気量ながら、ターボが付いていることで十分なパワーを発揮してくれます

圧倒的なお買い得感 こだわるならターボモデルを狙いたい

バレーノのグレードは、ターボエンジンを搭載し装備も充実の「XT」と、NAエンジンの「XG」、そしてその上級仕様の「XS」の3グレード。

ただし、2016年11月にXSグレードが登場した直後にXGグレードは消滅しています。

執筆時点での掲載台数は、76台と現行車種としては驚きの少なさ。掲載されている個体の多くがスズキのディーラー系中古車店であり、展示車や試乗車上がりが中心というのは、安心感が高いと言えるでしょう。

走りの楽しさにもこだわりたいユーザーにオススメな、ターボモデルのXTの掲載台数は21台。

その中の7割くらいは一部改良前のハイオク仕様モデルですが、ほとんどが3万km台以下と低走行なのはうれしいところ。

もちろん年式から考えれば妥当なところとも言えますが……。

価格は安いものでは総額100万円ちょっとのものから見つけることができ、半数が総額130万円以下となっています。

同じエンジンを搭載するスイフトRStは安いもので総額130万円~となっているので、バレーノのお買い得感の高さが際立つ結果となりました。


一方、NAエンジンを搭載するXGおよびXSは、安いものでは総額で100万円を切るものもありますが、ボリュームゾーンとしては総額110万~120万円台といったところ。

新車時のターボモデルとの価格差が20万円ほどだったことを考えると、NAエンジンモデルだから別段安いというわけではなさそうです。

特に100万円を切る個体は、XGグレードで装備が一部簡素化されてしまっているので、NAエンジンにこだわって探すのであればXSグレードがオススメです。

執筆時点では現行車となるバレーノも、2020年6月をもって日本での販売を終了するという情報も入ってきているので、今のうちに良質な中古車を購入して大切に愛でていればいつか激レア車としてフューチャーされる日がくるかもしれませんよ。


スズキ バレーノ

文/小鮒康一(フナタン)、写真/篠原晃一

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小鮒康一(こぶなこういち)

自動車ライター

小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。