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当時をリスペクトしながら、「自分らしい」1台に。Z世代の若者が一生乗りたいと願う、トヨタ セリカXX
2023/03/01
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
“手間がかかる子”なところがいとおしい人生初の愛車
ベーターさんは22歳。いわゆるZ世代である。だからセリカXXを愛車に選んだ理由は「昔乗っていた」というノスタルジーではなく、今の車とは明らかに異なるカタチが気に入ったから。初代フェアレディZなどに乗っていた義父の影響で、子供の頃から「メカメカしくてカッコいい機械」が好きだったという。
また、ほぼすべての作品をフォローするほどファンだった松本零士作品に登場するSFメカにも大きな影響を受けたのだとか。
そんなベーターさんが、やがてランボルギーニ ミウラやカウンタックなど、非日常的なSF的デザインのスーパーカーに魅了されるようになったのは必然だった。とはいえ、自分で所有となると、それらのモデルはあまりにも高嶺の花である。
「愛読していた『頭文字D』の影響もあって、当初はAE86トレノを買おうとしたんです。現代の車にはないリトラクタブルヘッドライトがいいなと。でもいろいろと調べていたら、似たようなフロントマスクをもつセリカXXという車があることを知り、そっちが欲しくなってしまって」
そして、2年前に2Lのツインカム6気筒エンジン(いわゆる1G-GEU)を搭載する「2000GT」を見つけ、約250万円で購入した。
かなり高価にも思えるが、近年のヒストリックカー高騰の流れでセリカXXの相場はさらに上がっており、この価格で入手できたのはラッキーだったとベーターさん。
「金額的には新車だって買えちゃいますけど、現存数の少ない旧車との出合いは縁あってこそですからね。個体によって仕様やコンディションも違うのでオンリーワンの価値があると思ってます」
フェンダーミラーを採用するボディは年式なりに劣化が進んでいるが、赤いボディカラーは鮮やかさを保っている。なんと、その色はオリジナルペイントのままだという。
しかし、やはり生産から約40年が経過した中古車。やはりノントラブルというわけにはいかない。まず、お店から車両を引き取った直後に点火系の接触不良で交差点の真ん中で動かなくなったという。だが、古い車に乗っている義父を子供の頃から見ていたため、『まあこんなものかな』とさほど動揺はなかったそう。
「エンジンなどの基本部品は丈夫ですし、高回転まで回してもまったく問題ないです。高速道路は10kmを超えるとキンコンうるさいですが(笑)。クセがなくてすごく乗りやすいんですけど、MTかつ排気音が元気なところに『昭和の息づかい』を感じますね」(ベーターさんは平成生まれ)。
車を通じて広がった交友関係でより充実したカーライフに
修理や車検のため、旧車専門の工場に持ち込んだところ、いくつかの不具合が見つかった。ついでに自分好みにカスタムなどを行い、購入後2年のうち1年弱は工場に入庫していたという。
だが、手のかかる車は新しい出会いを与えてくれる。セリカを診てもらっている工場やSNSを通じ、同年代だけではなく親ほども年の離れた車好きとも交流するようになったのだ。
また、メカニックから「若いうちはなるべく自分で車を触るようにして理解を深めた方がいい」と勧められ、自身で整備も行うようになった。
修理は工場に頼むことが多いが、部品の取り付けはほぼDIYで行っている。サスペンションまわりなど、大掛かりな作業は工場などの敷地を借り、友人と共同で行うことも多いという。ちなみにジュラルミンから削り出したシフトノブもお手製だ。
「こういう車に乗っていると、当時の仕様に詳しい年配の方からアドバイスされることも多いんです。『少しタイヤが寝すぎかな』とか。そういう意見は積極的に吸収してカスタムに生かしたいですね。当時をリスペクトしつつ、いまの若い子にもカッコいいと思ってもらえるスタイルが僕の理想なので」
懐かしいデザインのアルミホイールに大きくホワイトレターを入れたタイヤの組み合わせは、確かに新旧融合といった趣。
少し面白かったのは、ベーターさんは断じて反社会的な人物ではないが、古い『ヤ〇グオート』や『チャン〇ロード』といった雑誌をカスタムの資料として眺めることもあるというお話。
かつての不良っぽい車文化は、時代とともにアウトローの側面が脱色され、ファッション化が進んでいるのだ。今後は、なるべく長く乗れるようにするためのメンテナンスとカスタムをうまく両立させたいとベーターさん。人生初の愛車だが、墓場まで持っていきたいほど気に入っているという。
ベータ―さんのマイカーレビュー
トヨタ セリカXX(1983年式)
●購入金額/中古で250万円
●年間走行距離/約1万km
●マイカーの好きなところ/全部!
●マイカーの愛すべきダメなところ/加速がにぶいところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/この車が好きな人! 好きじゃなけりゃ乗れないです!
インタビュアー
佐藤旅宇
オートバイ専門誌や自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産ラルゴ・ハイウェイスターの他、バイク2台とたくさんの自転車。この2年で5台の車を購入する中古車マニア。
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