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’96 PORSCHE 911 TARGA(type 993)【EDGE/名車への道】
カテゴリー: クルマ
タグ: ポルシェ / 911 / EDGEが効いている / VINTAGE EDGE / 名車への道
2019/01/01
![▲1993年から98年まで製造された最後の空冷911に用意されていたタルガトップ仕様。他世代のタルガと異なりスライドする大型のルーフ「ライディング・グラストップ」を採用し、取り外し式だった964時代よりも快適性を大きく向上させていた。また、クローズド時は通常の911と同じシルエットとなっているのも大きな特徴である ▲1993年から98年まで製造された最後の空冷911に用意されていたタルガトップ仕様。他世代のタルガと異なりスライドする大型のルーフ「ライディング・グラストップ」を採用し、取り外し式だった964時代よりも快適性を大きく向上させていた。また、クローズド時は通常の911と同じシルエットとなっているのも大きな特徴である](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/1.jpg)
あえてティプトロで楽しみたい大人の911だね
EDGE:今回は特集テーマとは別の車にしました。993タルガです!
松本:お? いいじゃない。素晴らしいよ。嫡流じゃないところとか、個人的には993のタルガは固定観念にとらわれない設計がされていてとても好きなんだよ。
EDGE:タルガって最初と今の991の仕様というかデザインがイメージ的に強いですよね?
松本:そうだね。最初の911タルガ(*1)はステンレス製のロールケージをコの字型にプレスして剛性を高めたんだ。あのスタイルにはタルガのアイデンティティがある。だから現在の991型も同じ形を採用してるね。
EDGE:なんでステンレス製だったんですか?
松本:アクセントということもあると思うけど、ポルシェは腐食をとても気にしていたんだ。ステンレスボディの911をテストしたっていう逸話が残っているくらい惚れ込んでいたんだ。コストが合わなくて結局はやめたんだけどね。
EDGE:それはすごい話ですね……。あ、今回の車両はこちらですね。
松本:これかぁ。すごくいいね。僕が最も好きなターコイズグリーンじゃない。この色って、当時のメルセデス・ベンツとかにもあったんだよ。そしてタルガトップにティプトロって最高の組み合わせ。優雅でいいじゃない。
EDGE:この時代のポルシェもドアを閉めると「ガキン」って音、します?
松本:もちろんだよ。金庫を開け閉めするような重厚感があって、でも重くない感じ。これはなかなかできる技術じゃないよ。特に閉めたときの音が最高だね。精度の高さを改めて感じる。しかもこのモデルは恐ろしく程度がいいね。
EDGE:距離2万4000kmですって……。
松本:素晴らしいね、オーラが違うよ。
EDGE:いまさらですけど、タルガってどういう意味なんですか?
松本:タルガはイタリア語で「プレート」や「盾」のことをいうんだ。で、伝説の公道レースであるシチリア島のタルガフローリオ(*2)でポルシェの数々の勝利を讃えてのネーミングなんだけど、盾のようなルーフという意味もあったんだと思うよ。
EDGE:なるほど。でも911の中でもなんか特別な雰囲気がありますよね、タルガって。
松本:これはあくまで好みなんだけど、僕は993タルガが一番利便性とスタイルを両立させていると思うんだよ。993タルガの大型サンルーフ仕様は現在だったら技術的に可能なんだけど、ポルシェが作ったのは今から20年以上も前だからね。ルーフとブラインドを閉めることができ、ブラインドを開けて光をキャビンに入れて開放感を得る。ルーフを開放すれば風を取り込んで、ダイナミックなドライビングフィーリングを感じることもできる。もちろんルーフを半分だけ開けてサンルーフっぽく軽い感じに扱うこともできるしね。
EDGE:乗るとどんな感じなんですか?
松本:993って最後の空冷って言葉が先行して他のイメージが薄いんだけど、実はボディパネルの精度の高さが尋常じゃないんだよ。その感じはもうポルシェでさえコストが高くて出せないんじゃないかな。それはタルガだって同じなんだ。サスペンションも964から比べるとしなやかで、リアサスペンションとエンジンのアセンブリーはアルミ合金をふんだんに使ったレーシングカーみたいな仕様なんだよ。
EDGE:ティプトロってのがまたキャラに合ってますよね?
松本:そうなんだよ。もちろん、MTで走らせた方が楽しいと思うよ。でも僕はティプトロも嫌いじゃないんだ。ポルシェは一貫したスポーツカーメーカーだからね。この頃は現在以上にその思いがあったんじゃないかと思う。そのポルシェがZF社(*3)と共同作ったATはとてもダイレクトでパワーバンドを逃さないスポーティさがウリなんだ。気持ちよく流すにはちょうどいい。ズバッと加速したいときは躊躇なく、クルージングでも地から動力を離さない。これが60年代のスポルトマチック(*4)から流れるポルシェ流のATの考え方なんだ。
EDGE:間違いなく名車になるでしょうね。
松本:そりゃそうだよ。このヘッドライトを見てみなよ。ポルシェ最後のガラスの仕様だよ。ガラスは経年変化が本当に少ないからね。100年たっても平気でキレイなものもあるしね。工業的なのに、調度品としても最高なポルシェが993なんだ。この大きなガラスを使ったタルガは特にね。ほんとバランスが取れているよ。街で見かけると目で追っちゃうもんなぁ。
■注釈
*1 最初の911タルガ
901ことナローポルシェの時代から設定されていたタルガ。当時はステンレス製のロールケージをもつ独特のルックスが特徴だった
*2 タルガフローリオ
1906年から77年までイタリアのシチリア島にて開催された伝説の公道レース。ポルシェはここで多くの好成績を残している
*3 ZF社
ドイツの自動車部品製造メーカー。高性能トランスミッションを作り続け、そのシェアはEU圏内は60%を大きく超えている
*4 スポルトマチック
フォルクスワーゲンビートルなども採用していた2ペダルの自動クラッチによる変速システム。希少なポルシェの装備としても広く知られている
![クアトロポルテ](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/2.jpg)
![クアトロポルテ](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/3.jpg)
![クアトロポルテ](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/4.jpg)
![クアトロポルテ](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/5.jpg)
![クアトロポルテ](http://www.carsensor.net/contents/article_images/_63768/6.jpg)
photo/岡村昌宏
【関連リンク】
※カーセンサーEDGE 2018年8月号(2018年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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