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三菱 新型アウトランダーPHEVはよく曲がる? 静かで速い? 口コミのワケを解説
- 筆者: たけだたけし
- カメラマン:茂呂幸正 三菱自動車
ネット上に溢れている口コミの数々。当企画では、ユーザーの車への感想を車種の技術的なメカニズムから明らかにする。今回は2021年に三代目となった三菱 アウトランダーPHEVを取り上げる。
「アウトランダーPHEVはよく曲がる」と言われるワケは?
エンジンと前後モーターを組み合わせ、最適な駆動力を発揮する「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」を採用した新型アウトランダーPHEV(ちなみに先代型では前輪のみだった左右輪のブレーキ制御を後輪にも追加されている)。様々な口コミがある中でも、特に走行時のハンドリング性能は好評だ。
「リヤの足の動きが凄く良く感じられた。どんなに振ってもピタッと収まるのが気持ち良い! ただしフロント側の接地感は少し希薄で、ステアリングからの情報入力があまり感じられない」
「以前のモデルはどこかフワフワして頼りない乗り味だったが、新型はしっかりとした剛性感、安心感が感じられる」
「ハンドルが軽く、レスポンスがクイック!」
「S-AWCは優秀で、アクセルオンでよく曲がる。だが、限界域ではアンダーステアに感じる」
ユーザーたちがこう感じた理由は、どこから生まれるのか詳細にみていこう。
ハンドリングが良いのはボディの進化がデカい
「しっかりとした剛性感、安心感が感じられる」「ロールの揺れがピタッと収まる」と感じるのはシャーシー全体のレベルアップによってもたらされている。軽量でよく動くサスペンション、ロールを抑える中空式スタビライザーなどの影響もあるが、特にボディ剛性の向上は大きいだろう。
新型アウトランダーPHEVではルノー・日産・三菱グループ共通の「CMF-C」と呼ばれるプラットフォームに一新。強度の高い「ホットスタンプ式超高張力鋼板」も多用して、キャビン構造の変形が少なくなった。つまり、ガッチリしたボディになり、操舵する力がしっかり路面に伝わるようになったため、操縦性が高く感じられるのだ。
先進的なステアリング機構もハンドリングに好影響
「ハンドルが軽く、レスポンスがクイック」と感じる操縦性は、小さな操舵で大きく舵が切れるステアリング機構と、新採用された電動パワステによるものだろう。
新型アウトランダーPHEVのステアリング・ロックtoロックを、従来型の3.3回転から2.6回転へとクイック化。さらに電動パワステ特有の違和感が少ない「デュアルピニオン式電動パワーステアリング」も採用されて、操舵感が軽く、ナチュラルになった。しかし、このパワステには路面からの入力をステアリングへマイルドに伝える特性がある。「ステアリングからの情報入力があまり感じられない」という印象は、その影響かもしれない。
S-AWCなど電子制御もハンドリングの味付けに
「アクセルオンすると、よく曲がる」という印象は、リアモーターの出力が大幅にアップされたこと、そして駆動力を電子制御して曲がりやすくする「AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」が関係している。
旧型ではAYCがフロントにしか搭載されていなかったが、新型ではリアにも搭載。リアモーターの出力もアップしたことで、四輪で旋回するフィーリングとなった。一方で「限界域でアンダーステアに感じる」のは、タイヤが完全にグリップを失った状態になると危険と判断して「ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)」が働くから。姿勢を乱さないよう制御し、安全を確保してくれているのだ。
「アウトランダーPHEVは静かで速い」と言われるワケは?
新型アウトランダーPHEVでは動力性能の高さも注目されている。
「PHEVならではの力強い走りにビックリした」
「静かさと加速の良さが好印象」
「旧型よりも静かになった!」
「パワフルなのにタイヤが減らないのは驚き」
加速感と静粛性について絶賛している口コミがネットでは散見された。
モーター出力の大幅アップで力強いのは当たり前に
アウトランダーPHEVの車重は2トンを超えている。それでも「加速が良い」「力強い」と感じられるのは、新世代のPHEVシステムに起因している。
2.4Lガソリンエンジンと前後にひとつずつモーターを組み合わせ、旧型から大幅に性能が向上している。駆動用モーターの最高出力はフロントが85kW、リアは100kW。通常走行時は前後モーターで走り、全開加速ではエンジンの力も加わるのだから遅いはずがない。
走行中でも静かなのはエンジンをほとんど回さないため
「旧型よりも静かになった」と感じる理由は、ボディの遮音性が良くなったことに加えて、モーターだけで走れるシーンが増えた影響だろう。新型ではモーター出力とバッテリー出力が増えて通常走行時はモーターのみでも走行できるようになった。エンジンを回すのは、バッテリーの電気量が少ない時や全開で加速する時など、シーンが限られている。
さらに旧型の温水式エアコンから「ヒートポンプ式エアコン」へと変更され、暖房のためにエンジンを始動する必要もなくなっている。要は、エンジンをほとんど回していないから静かなのだ。
タイヤが減りにくいのは巧みな電子制御が要因
パワフルな車はタイヤを回すのに大きな力が掛かるため、通常タイヤの減りが早い。しかし、ユーザーの口コミには「今までの車に比べてタイヤの減りが遅く感じる」という声がある。これは恐らく、S-AWC、ASCなど電子制御の恩恵だろう。
S-AWCは路面状況やアクセル開度などに応じて、最適な駆動力を四輪に配分される。ASCは車の姿勢を安定させるための安全装置だ。どちらもタイヤを空転させないことが使命であり、駆動力をロスなく路面に伝えている。結果、タイヤが減りにくいと考えられる。ちなみに、車の慣性エネルギーを電気に代える回生ブレーキも備わっているので、ブレーキパッドも減りにくい。パワフルなのに経済的なのはうれしいところだ。
「PHEVなのに居住性が良い」と言われるワケは?
エンジンにモーター、駆動用バッテリーに制御装置とPHEVは一般的なエンジン車より部品が多い。かつてのハイブリッド車は居住性が犠牲になることが多かった。では、新型アウトランダーPHEVの車内はどのような評価かと言うと……。
「室内が広く、3列目も子どもなら十分なスペース。ファミリーカーとしても満足しています」
「居住性が良く、後席を倒すとしっかりフルフラットになるところが良い」
「長距離ドライブでも疲れない、と家族に評判」
ハイブリッド車のセオリーに反して、高評価の口コミが目立った。
居住性はサイズアップと低床化の恩恵
「車内空間が広くなった」と言われるのは、単純にボディサイズが大きくなったから。旧型に比べて新型は全幅で60mm、ホイールベースで35mmも延長。ボディを拡大した分、車内空間も広がった。
ただ、車内に余裕ができたのは、ボディの拡大だけが理由ではない。リアモーターとそれを駆動するためのインバーター(電流の変換回路)を一体化。コンパクトになった分、床面を下げることで車内を広くしている。
長く乗っても疲れないのは低重心の効果
「長距離ドライブでも疲れない」「乗り心地がいい」と感じるのは、低重心化を徹底したためだろう。背の高いSUVでは揺れが大きくなり、疲労感につながりやすい。
新型では駆動用バッテリーをフロア下、モーターを車軸に配置するなど、重量物を低い位置に搭載。同時にボンネットなど高い位置にある部品をアルミにすることで重心を下げ、不要な揺れを抑えている。
「新型のデザインは押し出し感が強くなった」と言われるワケは?
走りや居住性については概ね評価の高い新型アウトランダーPHEVだが、デザインについては賛否両論がある。
「押し出し感の強いマスク、エクステリアは嫌いじゃない、むしろ好き!」
「新型より旧型の方がデザインは良い」
デザインは個人の好みによるところが大きいが、好かれるにしろ嫌われるにしろ、そこに理由がある。
見た目のインパクトはダイナミックシールドが採用されたから
アウトランダーPHEVのデザインは押し出し感が強く「迫力があって良い」という人もいれば「ちょっと派手すぎる」という人もいる。これは、三菱が2015年から掲げてきた「ダイナミックシールド」というデザインコンセプトに由来している。
ダイナミックシールドには「形態は機能に従う」という発想が根底にある。具体的には「ランプ類を上下に分けることで歩行者からの視認性を高めつつ、予防安全にも配慮した」と三菱は言う。新型のデザインはより色濃くコンセプトを反映した結果だ。押し出し感の強さの裏にある、安全性を高める優しさ。そのギャップを知れば好感度がより上がるかもしれない。
新型はユーザーが肌で感じられるほどパワーアップ!
多くの好意的な口コミが寄せられていたアウトランダーPHEV。その理由の裏には、確かな技術があった。プラットフォームやPHEVシステムなど各部が大きく進化。さらに計算され尽くされた全体のバランスが、ユーザーの心を打ったのだろう。
[筆者:たけだ たけし/撮影:茂呂 幸正]
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