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FIA-F4第2戦富士で複数エントラントが参戦見合わせの異常事態発生。原因不明のエンジントラブルが理由
5月4日、静岡県の富士スピードウェイでスーパーGT第2戦富士のサポートレースとして、FIA-F4ジャパニーズ・チャンピオンシップ第2戦の決勝レースが行われたが、37台がエントリーしたレースのうち、TGR-DC RS F4の4台(佐野雄城、卜部和久、鈴木斗輝哉、梅垣清)、HFDP with B-Max Racing Teamの2台(野村勇斗、洞地遼大)、PONOS RACINGの2台(大宮賢人、佐藤凜太郎)をはじめとしたチャンピオンクラスの顔ぶれをはじめ、複数台が参戦を自主的に見合わせ、リタイアを決断した。5月3日の第1戦から第2戦までの間に何があったのか、GTアソシエイションでFIA-F4を担当する服部尚貴プロジェクトリーダーが説明を行った。
2024年から第2世代となる新シャシーMCS4-24/TMA43エンジンという組み合わせの車両が導入されたFIA-F4。合同テストを経て5月3~4日の第1戦/第2戦に向け37台がエントリーし、5月3日の第1戦では、ステップアップを目指す若手ドライバーたちによるチャンピオンクラス、フォーミュラを楽しむジェントルマンや女性ドライバーのインディペンデントクラスのどちらも熱戦が展開された。
そんなFIA-F4は5月4日8時から第2戦の決勝レースが行われたが、本来エントリーしていた37台のうち、チャンピオンクラスは22台中スタートしたのが13台、インディペンデントクラスは15台中11台のみの出走となった。同時に、TGR-DC RS F4についてはTOYOTA GAZOO Racingから、HFDP with B-Max Racing TeamについてはHRCからそれぞれ「より確実な安全確保のため、自主的な判断でレース出場を見合わせることとなりました」という声明がSNSを通じて出された。
この異常事態に対し、服部プロジェクトリーダーは第2戦のレース後、メディアに向け緊急でミーティングを行い、「今季のクルマについて、パーツデリバリーの遅れ等もありエントラントに迷惑をかけてしまったところがありましたが、ここへ来てエンジンにトラブルが発生しはじめてしまいました。スポーツ走行で1台が壊れたことを皮切りに、今週に入って7基のエンジンにトラブルがありました。7台ではなく、同じクルマで2基壊れたところもあります」と状況を説明した。
これらのエンジントラブルについては、原因が明確にできておらず、5月3日の第1戦でもトラブルが発生。レース後、トラブルの対策についてエントラントを集めたミーティングが行われたという。さまざまな対策が採られたが、「4気筒のうち1気筒が壊れてしまう現象がありました。昨年のクルマよりも回転が高くなっており、昨年は6200回転シフトだったのが、今年は6800回転シフトとなっていますが、共振により配線のトラブルなど、いろいろな可能性がありました」ということから、回転を300回転下げ、エンジン温度を下げるためにも燃料を5%ほどリッチにして使用される対策が全車に採られた。
ただ、エントラントからはトラブルの原因が明確になっていない以上、第2戦を中止にすべきではないかなど、さまざまな声が上がったという。しかし、服部プロジェクトリーダーはすでに予選も終わっているなか、さまざまな可能性を模索。「中止というかたちを採ることもできないことはありませんでしたが、検証も何もできなくなってしまう。前に進めなくなってしまいますし、次戦も開催できなくなってしまう。今回の対策が有効なのかを含め、レースを開催しました」と説明した。
「今日については、エンジンによるトラブルの情報は入ってきていませんが、対策が有効だったのかも含め、検証しなければいけません。次大会の鈴鹿まで時間もないので、全力で対策をトライしていきたいというのが現状です」
このエンジントラブルについては、合同テスト等では一切出ていなかったものだったという。ハーネスによるものなのか、振動によるものなのか、気温が上がったことによるものなのかなどは、服部プロジェクトリーダーの言うとおり検証が必要になるだろう。
■「車両に不具合があるリスクは避けなければならない」参戦見合わせのエントラントの意見は
一方、参戦を見合わせることになったエントラントからはさまざまな声も聞かれた。「我々は未成年のドライバーをお預かりしていますし、彼らは決してまだプロドライバーではありません。四輪レースに上がって一年目で慣れていないドライバーもいますし、安全性がしっかり担保されていないなか、出場させるのは危険であるというメーカーの判断に対し、我々も同意するところでした」というのは、TGR-DC RS F4の福木哲也代表。
「当然、レースなので危険がともなうことは理解していますが、一定の安全基準が満たされた上のことだと思っていますので、車両に不具合が出る可能性があり、それが事故に繋がる恐れがある状況では、我々としてはリスクが高いと感じています」
また、PONOS RACINGの辻子位旦総監督は、「エンジンに問題があると分かり、その原因が解明されていない以上、未成年のドライバーをお預かりしているので、知っているリスクは絶対に避けなければいけないと考えました。レース中にトラブルが発覚してしまったら仕方ないですが、知っていて走らせるのは違うのでは、というチームの方針です」と説明した。
「何かあったときには全員不幸になってしまいますし、誰にとっても良くないと思っています」
HFDP with B-Max Racing Teamを運営するB-Max Racing Teamの組田龍司総代表は、ドライバー『DRAGON』として自らFIA-F4に長年挑戦し、3日の第1戦ではインディペンデントクラスの優勝も飾っている。ただ、第2戦は自らも出場を見合わせた。
「基本的に、危険という観点で見ると、レースはそもそも危険性をともなうものではありますが、車両側に不具合がある可能性がある場合においては、意味合いが違うと思っています。競技者の危険は承知でやっていることですが、使う道具について最低限の安全が確保されている上でお互いがレースができると思っています」と組田総代表。
「自分たちがお預かりしているスカラシップドライバーはもちろん、他のドライバーを危険にさらす可能性は看過できないと思っています。もちろん自分もチームの総代表として、若手だけでなく全ドライバーに対して同じことが言えることから、出場を見合わせました」
また、3日に行われたエントラントミーティングのなかで「明確に原因が出ていないなかで、もし万が一トラブルが起きた場合はどういうことが想定されるかを聞いたんです。そのなかで、富士スピードウェイのストレートを全開で走っているときに『25%ほどスロットルを戻したような状況が起こりうる』という想定をうかがいました」と組田総代表は明かした。
「スリップストリームの取り合いになる富士スピードウェイで、多くの台数が連なって走るレースで、1台が25%ほどスロットルを戻したらどうなるか。恐ろしいですよね。今回の第2戦は性能を落とすことで開催されましたが、トラブルが起きる可能性を下げることはできていても、トラブルが起きる可能性がゼロにできるとは言い切れないということでした。その中で開催を強行したことは、乱暴ではないかと私は感じています」
「今回、性能を下げてレースをしたことについても、レーシングカーのエンジンは一台一台性能を揃えているので、同じマップを入れたとしてもすべて同じにはならないと思っています。公平性が担保できないと思います」
まさかの事態となってしまったFIA-F4第2戦だが、FIAのスーパーライセンスポイントも関わってくるシリーズでもある。何より、若手ドライバーたちの戦う機会が失われることは避けなければならない。一刻も早い原因特定が待たれるところだ。第2大会は6月1~2日、鈴鹿サーキットで開催される。
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