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SHAREV8ツインターボエンジンをリアミッドに搭載するマクラーン750Sは、先代モデルである720Sを全方位で進化させている。クーペとともに新たに追加された750Sスパイダーを同時に連れ出し、それぞれの個性を探った。
並みの高級車では太刀打ちできないオーラ
1月下旬、サーキットで全開走行を体験できたが、マクラーレン750Sのパワー、加速、ストッピングパワー、そしてハンドリングすべてが高次元でバランスされているのに驚いた。ミッドシップなのに、そしてこんなにハイパワーで速いのに安心感が高く乗りやすい。まるでレーシングカーに乗っているような感覚でアドレナリンが噴出した。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
サーキットではすこぶるゴキゲンな走りだったが、一般道路ではどうなんだろう、ということで、クーペとスパイダー、2台を連れ出し都心から箱根までドライブした。都心の駐車場でもひときわオーラを放っている750S。高級車が並ぶ中でもすぐに視覚に入ってきた。
まず乗ったのは赤のスパイダー。サーキット走行ではじっくり室内空間を確認できなかったが、改めて見るとカーボン素材が多用され、徹底的な軽量化が図られている。シンプルでスポーティな雰囲気でありながら、価格に見合った〝上質感〟も備わる。
ステアリングコラム上にメーターパネルがマウントされているため、どんなポジションでもメーターまでの適正な距離を保てる。そして、そのパネル上部、右手にパワートレーン、左手にハンドリングのモードスイッチが装備される。ハンドルから手を離さず、目線も外さず操作でき、とくにスポーツドライビングの際には運転に集中できる。
センターコンソールに縦長のディスプレイがあり、その下にギアセレクターをはじめとする最低限のスイッチが並ぶ。AppleCarPlayにも対応しているので、スマートフォンをつなげばナビから音楽まで、日常シーンでも便利で快適だ。
緊張感、扱いづらさはまったく感じない
いざスタート、となると、ちょっと緊張した。さすがにスラントしたノーズはまったく目視できず、車幅も掴みにくいからだ。でも、一般道に出てサイドミラーを確認すると、車線に余裕があることが認識でき、ようやくひと安心した。さぁ、ドライブを堪能、というところだったが首都高に乗るとすぐに渋滞にハマってしまった。
4L V8ツインターボエンジンを搭載する750Sは、750ps、800Nmという凄まじいパワースペックを有する。しかし、渋滞で数mずつチョコチョコ進むような状況ではきれいに爪を隠し、飛び出し感とか、パワーに振り回されるような感じはまったくなく、このような状況でも扱いづらさを感じさせない。2ペダルだし、アイドリングストップも装備されている。
やがて渋滞を抜けて流れ出すも、首都高は路面の継ぎ目が続く。サーキットであれほどまでに勇ましく走るのに、こんなシーンでもまったく不快感のない跨ぎ方を見せる。突き上げもなく、それでいてフラット。まるで魔法のサスペンションだ。
試しにハンドリングのスイッチをSPORTモードにしてみると、硬い、柔らかいというような変化よりも、路面からの入力がより素早く収束するという感じの変化。ただし、TRACKモードではさすがに突き上げがキツかった。
パワートレーンは、SPORTにすると明らかにアクセルレスポンスが高まる。けっして大袈裟でなく、ちょっとアクセルペダルを煽っただけで、内臓が動くようなトルク感が伝わる。いずれも、モードによってかなりの違いがあり、その差が大きい。だからこそ、一般道からサーキットまで、快適に走れるのだろう。
暴風雨の中でも不安なく走れてしまう
高速を降り、スパイダーのトップを開ける。途端に背中からエンジンサウンドがダイレクトに聞こえ、俄然、テンションが上がる。一般道ではそんなに高回転まで回せるシーンはないが、サーキットでレブリミットの8000rpmまで澱みなく回ることは確認済みだ。音だけでなく、背中を押されるような加速感も伴う。
そして、トップをオープンにすることによって、ハンドリングが変わることもない。何しろ、カーボンモノコックは高剛性ゆえ、そもそもオープンにすることでの補強も必要なく、対クーペ比の重量増はわずか49kgに抑えられているという。
ようやくオープンにしたのも束の間、雨が降り出し、やがて嵐のような暴風雨に・・・。残念ではあるが、でも、こんなコンディションの中でも750Sは不安なく走れてしまう。路面からの手応えもしっかりあり、トラクション性能も良い。もちろん、ESPが装備されるが、丁寧な運転をしていれば制御に頼ることなく走れる。
クーペに乗り換えると、まず違いを感じるのがステアリングフィールだ。スパイダーの方がズッシリと手応えがあり、クーペは軽くて操舵フィールもスムーズ。一見、こちらの方がいいように感じられたが、高速での安心感はスパイダーが良かった。
他にも若干の違いは感じられたが、おそらくはクーペとスパイダーの違いというより個体差と思われる。結論としては、軽量・高剛性ゆえどちらを選んでも遜色のないパフォーマンスを堪能できるはず。
マクラーレンの電動化モデルとして、アルトゥーラはあるが、BEVはまだない。「軽量」にこだわるブランドとしては、PHEVが現在のバランスポイントという判断だろう。実際、ワインディング路も走ったのに、10km/L弱という燃費を鑑みても納得できる。やっぱりスポーツカーには気持ちのいいエンジンが似合う。(文:佐藤久実/写真:井上雅行)
マクラーレン750S スパイダー(クーペ)主要諸元
●Engine
種類:V8DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:552kW (750ps)/7500rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/6500rp
燃料・タンク容量:プレミアム・72L
WLTPモード燃費:8.2km/L
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:4569×2161×1196mm
ホイールベース:2670(2670)mm
トレッド 前/後:1680/1629mm
乾燥重量:1326(1277)kg
●Chassis
駆動方式:MR
トランスミッション:7速DCT
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク
タイヤサイズ:前245/35R19 後305/30R20
●Performance
最高速度:332(332)km/h
0→100km/h加速:2.8sec
●Price
車両価格:43,000,000(39,300,000)
[ アルバム : 【特集「乗るなら今だ!心昂る、V8エンジン」(5)】 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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